がん細胞を免疫システムが感知

がん細胞内外のマーカーを利用して、免疫細胞にがん細胞を発見させる最新の技術

2018.01.22   |   17:00 JST

免疫システムは、敵の多い外界に対抗するために身体に備わる主要な防御手段です。ウイルスや細菌をはじめ自分自身の病的細胞および死細胞に至るまで、免疫細胞は体内のトラブルメーカーを探し出し、破壊します。

ところが、がん細胞は免疫系から隠れるやり方を知っているので厄介です。主として、腫瘍細胞が免疫応答を回避するその能力が、がんの治療を非常に難しくしているのです。そこで研究者は、患者さんの免疫細胞が腫瘍細胞を確実に発見し、死滅させるのを助ける手段の開発に取り組んでいます。

最近、海外において小児白血病に対して使えるようになった方法の1つが、患者さん自身のT細胞(白血球の一種)を遺伝子操作することで、がん細胞表面に存在するタンパク質を見分ける方法です。この種の治療法は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法と呼ばれています。

CAR T細胞技術を用いる場合、医師は患者さんから複数のT細胞を取り出し、T細胞の遺伝子を組み換えて、腫瘍が作り出すタンパク質を追跡する標識を取り付けます。次に、新たに武装したT細胞を数十億個レベルに増やし、患者さんの体内に戻してがんを追い詰めるのです。

患者さん用に遺伝子操作するCARは、がんの種類に応じて異なります。例えば、多くの白血病およびリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫など)の細胞表面に存在するCD19というタンパク質を捕捉できるのは特殊な受容体かもしれません。あるいは、CARは、B細胞成熟抗原をT細胞に引き寄せるように設計されることもあります。B細胞成熟抗原は、最大で70%の多発性骨髄腫患者さんの腫瘍細胞で見られるタンパク質です。

研究者は現在、いろいろな種類のT細胞で患者さんの体内に戻すときの比率を微調整する技術の向上を追究しています。これは、がん細胞を死滅させる細胞(CD8 T細胞)と、その機動性を高め、免疫細胞の追加動員を助けると考えられる細胞(CD4 T細胞)とを最適な比率で患者さんの体内に戻したいからです。[i]

CAR T細胞療法はがん細胞と闘うためにがん細胞の外側のマーカーを利用しますが、開発中の別の免疫療法ではがん細胞の内側に注目します。この場合、患者さんの免疫細胞に、がん細胞内に由来するタンパク質を見分けられるように遺伝子改変されたT細胞受容体(TCR)を組み込みます。これらのタンパク質の断片が腫瘍細胞表面にたどり着くと、遺伝子改変されたTCRがT細胞をがん細胞にしっかりと結合するように働くのです。

がん細胞の内外を問わず、がん細胞は、身体にとって招かれざる客である証拠となるタンパク質を作ります。このような目印をより効率的に発見する免疫系の力を活用すれば、現時点では選択肢が限られた患者さんにも、将来、新たな希望が出てくる可能性があるのです。



[i] Abbas AK, Lichtman AH, Pillai S. Cellular and Molecular Immunology. 8th ed. Philadelphia, PA: Saunders Elsevier; 2012.

 

この資料は、セルジーン社のホームページを日本語に翻訳(要約)、編集したものです。
英語版はhttp://www.celgene.com/をご参照下さい。